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癒しの選び方(1−2) アロマテラピー(芳香療法) アロマは「反応するだけの人生」から「自分らしい人生」に戻るきっかけをくれます。

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アロマテラピーは「共有」「共感」の感覚を広げる力がある

 

――前回はアロマテラピーの効果についていろいろお話いただきました。今回は、他のセラピーとの違いなどを教えていただけますでしょうか?

 

川口三枝子(以下、川口) そうですね。アロマテラピーの中でも、「アロマトリートメント」の特徴をいえば、やさしく触れて癒されるのが、やっぱりその良さかなと。アロマトリートメントに、強揉みやエステの手技を期待される方も多いですが、私は自分自身が揉み返しが来るタイプなので、マッサージに行ったら、まずはやさしいタッチを受けてゆっくり寝たい。肩凝りがないわけじゃないですけど。

 

――マッサージやトリートメントって、基本は「不調をなおす=結果を出すもの」だと思うのですが、「そのプロセス」「時間」に重きを置くというのも、大切だということですね。

 

川口 そうですね。もちろん不調が軽減することはとても重要ですが、「その瞬間に良い気分になる」っていうのが大切だと思うんです。私、アロマを勉強する前は、フランス菓子づくりを学んでいて、お菓子は「食べて皆が幸せになる」というのが、私の中でのイメージだったんですよ。アロマも同じで、「それをして皆が気持ち良くなって、幸せになれる」というのは、私のテーマとして共通しているかもしれないです。

 

――なるほど。

 

川口 それから、「みんなでできる」というのも、アロマテラピーの特徴の1つかもしれないです。他のセラピーって、1対1のことが多いですよね。「する人」と「される人」がいるっていう関係性。でもアロマはそこが違う。部屋に香りを焚けば、全員に共有できるし、アロマセラピストもその香りで癒されたりするじゃないですか。アロマトリートメントをすれば、お客さんと「この香り良いですよね」と気持ちを共有できて、お互いに笑顔になれる。だから「共感」とか「共有」みたいなものが含まれる部分は、他のセラピーよりも多いのかなって思います。

 

(アロマの良い香りを共有するだけで、お互いが笑顔になれる)

 

――たしかに他のセラピーだと、セラピストは相手に施すだけで、自分はそれを体感できませんよね。

 

川口 はい。それは他にはない長所だと思うんですよね。

話が少しずれますけど、宮沢賢治の「グスコーブドリの伝記」っていうお話があるんです。グスコーブドリさんというのは、冷害に悩む地域に住む貧しい少年なのですが、地域にある火山が噴火すれば冷害が解消されてみんなが幸せになれる。でも噴火を起こすには、誰か一人が残って、爆発スイッチを押して犠牲にならなきゃいけない、という物語で。結局、彼はスイッチを押すんですけど、彼の思いは「知らない誰かのために」というよりは、「自分の妹のために」ということだったんですよね。アロマテラピーって、良くも悪くも、周りにいる人にしかたぶん施せない。だけど確実に、顔が見える範囲の人を大切にできる方法の1つなんじゃないかなあと。

 

――結局、自分が死んでもスイッチを押そうと思えるのは、世界平和への思いがあるとしても、さらに根本に「大切な人がいるから」という前提があると。

 

川口 だと思うんですよね。私も噴火のスイッチを押して死にたくはないんですけど、身近に大切な誰かがいるから自己犠牲もできるというか。とくに「家族の健康」って、生きていく上で絶対にかかせないじゃないですか。アロマだったら、ふつうにお家でできる。子どもにアロマをちょっと使うことで元気に育って、その子が大人になってまた誰かにアロマを施してあげたら、結局皆にも広がるし。周りの、目に見える範囲をまずは楽しく、幸せにできるのが、アロマテラピーだと思ってます。

 

――アロマは皆で共有するだけじゃなくて、人から人へと広がる力があると。

 

川口 そうです。あともう1つ大事なことがあります。

たとえば、カウンセリングだと1対1ですけど、アロマだと、その関係性の中に「植物」も加わるんですよ。1対1のセラピーはセラピストとクライアントっていう関係性だけど、アロマはセラピスト、クライアント、プラス植物があって。セラピストは “架け橋”で、実際に人を癒すのは「植物」だと思うんですよね。人が人に触れて癒すっていう技術だけではない部分が、アロマにはある。

 

白黒の世界からカラフルな世界へ。「等身大で、自分らしく生きること」を自然が教えてくれる

 

――川口先生は、スクールのお庭でもたくさんハーブを育てていますよね。植物が大好きで、愛がすごくあるように感じます。

 

川口 実家が農家で、学校から帰ったらお茶摘みしたりするのが当たり前に育ったので。畑仕事って肉体的には大変だけど、自然や植物に触れるって心地いいんですよね。日が当たるし、風が吹いて良い匂いもするし、気持ちがいいし。虫もいるけど。

 

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(スクールの庭。ラベンダー、ローズマリー、ティートゥリー、

ユーカリ、レモングラスなどさまざまなハーブが植えられている)

 

川口 あと私、「人が怖い」と感じる部分があるんです。だから何か心の悩みがあったとき、カウンセリングを受けるとかはたぶん向いてない。

 

――そういう方は一定数いるかもしれないですね。

 

川口 植物だったら、一緒にいても気持ちがいいだけで、怖くない。アロマテラピーなどをはじめとする植物療法には、そういう癒しの側面もあると思います。

それを感じたのは20代の頃かな。私、人生の中でひどい挫折を感じたときがあったんです。家族も含めて、人としゃべりたくなかった時期があった。そんなときに、えんえん家の周りの畑の草むしりをしていたら、何だかそれだけで救われたんですよね。草むしりをする前は、何だか変なぐにゃぐにゃした白黒の世界にいたんですけど、草をむしりながらふと空を見上げたら、「あ、こんなにカラフルな世界だったんだ」って気づいた。自分の中の嫌なものを、植物が全部吸収してくれた感じがあった。

自然は良くも悪くも超越してて、圧倒しているので、自分のすべてをぶつけられる感じがある。私は行動的な性格なので、物事が思うままにいかないことをしんどく感じるときがあるのですが、自然に触れていると「無理なことはあるんだな」って体感できる。明日の天気も変えられないし、雨も降らせられないし。

だから、「植物が癒してくれる」という実感は、いつもなんとなくありますね。精油が何かしゃべってくれるわけじゃないけど、寄り添ってくれているのは。

 

――生徒さんやクライアントさんはアロマテラピーを体験して、どういう変化がありましたか?

 

川口 うちの生徒さんは忙しい方が多いのですが、「最近、子どもの通学路を歩いていたらジャスミンの香りがして、周りを見たら花が咲いていた。ああ、この子なんだって、アロマを勉強し始めて初めて気がついた」などと言っていただくことがあります。ふだんは忙しくて、通り過ぎてるだけだったのに、アロマを始めてから季節を感じるようになったり、空を見上げるようになったりとか。そういうことを聞くと、すごく感激します。

他にも、「以前はハーブにも全く興味がなかったけど、苗を買って、旦那さんと2人でハーブティーにして飲んだら、すごい楽しかった」と言われたり。不調が軽くなるだけじゃなくて、アロマをきっかけに、自然に親しんで変化していけるのがいいと思うんですよね。

アロマテラピーの権威である研究者の阿部茂先生は、「年を取れば取るほど、自然に還っていく。自然はやっぱり必要だ」とおっしゃっていました。私たちは自然の一部だから、自然と共にあることが、自然なんです。

 

――ふつうに生活していると、自分たちが自然そのものであることも忘れてしまいます。

 

川口 ええ。私たちってすごい忙しいじゃないですか。「締め切りがあるからやらなきゃ」って、義務や責任に対して「反応していくだけの生活」になっちゃいませんか? そうやって、反応、反応、反応…みたいになっているところを、自分に立ち返るようにしていくのが、自然の力だと思うんですよ。

自然というものが、「そもそも自分はどうしたいんだっけ」とか「自分にとって何が幸せなのか」ということを思い起こさせてくれたり、気づくきっかけをくれるんです。私たちにそう働きかけてくれるんです。(につづきます)

 

川口三枝子(かわぐち・みえこ) ナード・ジャパン認定アロマトレーナー。https://aromatime.jp/

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